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第14章
悲恋伝説の岬
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| 午後七時前に札幌駅に着くと、龍波は電車を乗り換えて旭川に向かうと言う。 「これからですか。大変ですね」 「なあに、九時頃には着くでしょう」 旭川までは、特急で一時間二十分の距離である。 その列車の出発までには三十分ほどの時間があったので、駅構内でコーヒーを飲んだ。 「じゃあ、何かわかりましたら連絡しますよ」 龍波は、そう言い残すと再び改札を通り抜けて行った。 それを見送ってから、駅構内を抜けてタクシー乗り場に出る。 外は、小雪が舞っていた。 五、六人が並んでいて、その後からタクシーに乗り込む。 ホテルの名前を告げると、「わかりました」と言って走り出した。 美緒が宿泊している同じホテルである。 車が走る道路は除雪されていたが、歩道の端には雪が積まれている。 十分もかからないうちに屋根のある車寄せにタクシーが着いた。 フロントで、チェックインをしてから、美緒の名前を告げて在室かどうか確認をして貰った。 「先程、お帰りになったようです」 「すみません。部屋へ電話をして貰えますか」 「かしこまりました」 フロントマンが電話をし、 「少々お待ち下さい」 と告げて受話器を渡してくれる。 「那珂川です」 「ああ、いまお着きですか」 「ええ。ちょっとお会いしたいのですが」 「わかりました。すぐに降りていきます。あたしもお話ししたいことがあるんです」 裕也は、バッグをフロントへ預けてからロビーへ行った。 備えられているソファは多くはなかったが、その中のひとつに腰を下ろした。 座ると、体が沈み込みそうになる。 見上げると、高い吹き抜けがあって、そこにガラス張りのエレベーターがあった。 しばらくすると、そのエレベーターが降下してきた。 一人の女性が乗っていて、ロビーを見下ろしている。 那珂川を見つけたらしく、小さく手を振った。 「お疲れさまです」 美緒がやってきて、軽く頭を下げた。 「もっと早く来る予定だったんですが、飛行機が飛ばなくて陸伝いにやってきましたよ」 「まあ、それは大変。じゃあ、お食事もまだでしょう。あたしも帰ったばかりなんです。お食事にしましょうか」 このホテルには、一階、二階、それに三階にそれぞれレストランがあった。 ふたりは、一階にある中華料理の店に入った。 先ず、ビールが運ばれてきて、 「遠いところ、ご苦労さまです」 と美緒がグラスをあげて、それに裕也が合わせた。 「実は龍波さんと札幌まで一緒だったんですよ。それで退屈しないですみました」 「あら、どちらにお泊まりなんですか」 「いや、旭川へ行かれました」 「旭川へ」 「昔の知り合いがいるとかで、何か情報があるのではと言っておられましたけれどね」 「旭川は、札幌よりも雪が多いでしょうに。大変ですね」 「こちらの事件は、何か進展がありましたか」 「それなんです」 美緒はグラスをおくと、裕也の顔を見た。 「さっき、こちらで知り合った警部さんから連絡を頂いたんです」 「あなたも、亜理沙と同じであちこちに顔が広いですね」 「いえ、偶然に知り合ったんです」 美緒は少し顔を赤らめた。 「この近くで発見されたのは上川孝史さんという方なんですが、その方の奥さまで上川奈美さんというひとが遺体で見つかったんです」 「なんですって? どこでですか」 「積丹岬の近くだということでした」 「積丹岬? 積丹半島なら聞いたことはあるけど」 「ええ、会社のものに訊いたら、その積丹半島の突端にある岬だそうです。小樽から余市まで行き、そこから更に国道を走るらしいです」 「随分、遠そうなところですねえ」 説明されても、裕也にはまったく見当が付かない。 もちろん、美緒にしても同じであった。 「行ってみたいですけど、この季節に行けるのかどうか」 日本海の荒海が打ち寄せ、雪と風が吹き付けている様子を想像して美緒が悩ましげな顔をしたところへ料理が運ばれてきた。 |